浦島太郎の随想

物理屋の妄想タイム

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英国の鳥(2)

 

 

前回の記事で、英国では人々が鳥を大切にするため、鳥が人を怖れない、ということを書いた。英国の鳥はその他の点でも、行動様式がかなり変っている。

 

 

 

鳥の交通事故

 

動物が交通事故の犠牲になることは、どこの国でもある。

 

日本では猫が犠牲になることが多いが、英国で路上に猫の死骸を見たことは記憶にない。

 

代わって、道路に累々と屍を連ねるのは、野兎と鳥である。兎は、季節によってはかなりおびただしい数になる。郊外の自動車道路を運転していて、視界の中に死骸が数体以上、と言う日もあり、絶えずよけながらの走行であった。

 

そして、鳥の犠牲もかなりの数にのぼる。

日本では珍しいと思うが、街中でその瞬間を目撃することがしばしばあった。人間を怖れない英国の鳥は、しばしば街中でも、頻繁に低空飛行する。そして、車に当てられてしまうのである。

 

動体視力が弱いのか、動いている物にふらふらと平気で近づく。私の車にぶつかってきたこともあった。横から急に、空中に現れるので、避けようがない。徐行している車でも、接触すれば失神する。

 

車の速度の違いも原因の一つであるが、私は鳥に俊敏さが欠けているのが、最も大きな原因ではないかと思っている。 

別の記事で、英国では虫の動きが遅いと書いたが、気温が低いと、動物は動きが緩慢になる。そもそも餌になる虫がのろければ、鳥も俊敏さを必要としない。

 

 

 

メタボスズメの秋

 

行動様式が変わっているという点では、スズメは最も面白い。

 

英国にもスズメがいる。数は日本より少ないが、見かけも鳴き声も同じであり、間違いなくスズメである。

 

いわゆる群雀(むらすずめ)は見た記憶が無い。単独行動である。日本のスズメは米を良く食べるので田に集まり、群れるのかもしれない。

英国でコメはあまり栽培されていないが、彼らは何を食しているのか?

 

 

やはり主食は虫であろう。

秋が深まってくると、彼らは食べまくる。越冬のため、食い溜めする。鈍重でも虫は簡単に捕食できるので、食料には事欠かない。

 

そして、晩秋になると、木の根の付近に、動けなくなった雀が転がっているのをよく見かける。

信じられないほど、丸々と太っている。太りすぎている上に、腹が一杯なのであろう。大変苦しそうである。

 

近づくとさすがに、逃げなければと思うのか、羽をばたつかせてもがくが・・・腹を上にして、仰向けになったまま、体の向きを変えることすらできない。

たとえ体勢を立て直して羽ばたいても、この体重では離陸できないであろう・・・

 

最初にこの光景を見た時は、怪我をしているのかと思い、拾い上げて調べてみたが、もはや逃げることは諦め、されるがままであった。

木の根の付近で良く見かけたのは、樹液を食料とする虫を食べていたのかもしれない。

 

 

こんな間抜けな鳥に食われる虫も、虫である。

 

何しろ、季節によっては、口を開けていれば勝手に餌が入ってくるほどである。交通事故さえなければ、英国は鳥の天国である。

 

 

(続く)