浦島太郎の随想

浦島太郎の随想 - 物理屋の妄想タイム

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竜宮城で貰った玉手箱をうっかり開けてしまった浦島太郎ですが・・・その後もしぶとく生き続けてネバーランドに流れ着き、
若い人々と物理学を楽しむ日々を送っています・・・

教員視察団(6)

 「教員視察団(5)」から続く

 

 

 続いては、日本側のスピーチの番である。オトメの隣に座っていた校長先生が立ち上がった。

 

 

大演説の人

 

突如、大音響の日本語が、会場に鳴り響き、人々を驚かせた。

 

 

 

 「我々、日英両国は、前世紀から100年以上に

       わたり、深い関係にある!」

 

校長の声はパーティの始まる前から絶え間なく聞こえており、始まってからも私語が続いていたが、ひと際、大きな声であった。そして、一区切り話すと、司会の英語の先生に通訳を命じた。

 

問題はその内容である。まず日英同盟に言及した。英国側の教員の間に緊張が走った。

 

パーティの席で、政治と宗教の話をしてはならない。なかんずく、戦争に関係する話である。司会者はためらったが、強引に通訳をさせられた。

 

その後、校長は、「英国の偉人たち」の名を次々と列挙し、英国を褒め称えた。

それらの何人かは、英国の人ではなかった。また氏名だけはなく、地名が混入していた。司会者は時間が無いふりをして、それらの一部をカットしたが、その度に校長は不満顔で「全部伝えろ」と彼を叱りつけた。

 

さらに、自分はスコッチウィスキーを愛飲していると述べ、とりわけジョニー・ウォーカーが好みであると強調した。言い終わると、あわてて「ブラックラベル」と付け加えた。司会者がこれを省略すると、「ブラックだ、ブラック!」と声を上げた。

 

この辺りから私の記憶は飛び始めているので、詳細は覚えていないが、このような話が延々と続く様相を見せた。「傍ら痛い」とは、このことであろう。私は腰を浮かせ・・・

 

 

瞬殺の人

  

オトメが、クスッと小さく笑った。 

 

息を呑むタイミングであった。 

 

通常であれば隣の者だけが分かる、微かなアクションであるが、大演説の最中である。全員がこれを目にした。

 

 

校長の動揺は激しかった。隣を向き、目を剥いて

 

「な、な、・・・なにが 可笑しい !? ・・・なにが 可笑しい ・・・

 

 

 

乙姫の微笑みをそのままに、正面を向いたまま、視線をやや落とし、彼女は上半身をわずかに動かして、笑いの残りを呑み込んだ。

 

 

 

校長の声は上ずり、かろうじて短時間だけ演説を続けた後、席に着いた。

その後、パーティが終わるまで、校長の大きな声は聞かれなくなった。

 

 

 

オトメの行動は、天衣無縫なのか意図的なのか・・・

実のところ、私にも解らない。

滅多にはやらない。

が、人生の窮地において、私は彼女の行動に、何度か助けられた。

 

後に確かめたところ、「だって・・・笑うしかないじゃない・・・」とだけ答えた。

 

 

(続く)