浦島太郎の随想

浦島太郎の随想 - 物理屋の妄想タイム

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竜宮城で貰った玉手箱をうっかり開けてしまった浦島太郎ですが・・・その後もしぶとく生き続けてネバーランドに流れ着き、
若い人々と物理学を楽しむ日々を送っています・・・

英国にやって来た教員視察団(8)

 

 

 

教員視察団(7)」から続く

 

 

 

メルトダウン

 

会が進むにつれて、他の場所でも、程度の差はあれ、同じような状況が始まっていた。英語は殆ど聞かれず、大声の日本語が飛び交うようになっていた。

 

外国語のため、話の内容は解らないが、余りにも喧騒がひどい。

普通のパーティではなくなりつつある。「金曜日のパブ」の比ではない・・・

どのテーブルでも、英国の人々の表情には、はっきりと困惑が見て取れた。

 

恐らく司会の英語教員も、大いに苦労していたであろう。彼は会場の中央付近で、立ち上がって幾つものグループを仕切っていた。聞こえていた英語は、彼の声だけである。むしろ、心配していたオトメの周辺が、最も落ち着いたスポットであった。

 

私は他のグループまで気を配る余裕はなかった。男の行動はさらにエスカレートし、抑え抱えが効かなくなっていたのである。

卑猥な言葉をチラつかせるのは最初からであったが、その頻度が増し、「〇〇〇〇は英語で何というのか、隣の女性に聞いてみろ」「英国人も、××の時はやっぱり※※するのか?」など、聞くに堪えない言葉を連発していた。私は、叱責に近い言葉を混えて、何とか彼を黙らせようと、必死であった。

 

理科教員はどうしたのか?話に参加したくないのは仕方がないが、彼は最年長である。男をたしなめる立場ではないか。一体、何を・・・

 

 

椅子を少し離れた壁際に移動し、私の視界から消えていた彼に目を遣り、思わず声を上げそうになって、反射的に顔をそむけた。

無表情な彼の目は虚空の一点を見つめて静止し、完全に別世界にいた。

オトメの警告は、これだった。

同じ話を繰り返した時に気付くべきだった。最初から、どことなく目の焦点が合っていないとは思っていたが・・・

 

社会科教員は腕を組み、下を向く場面が増えた。時々、申し訳なさそうに、上目使いで私を見上げた。

 

 

もはや我慢の限界、と感じた時、オトメが洗面所に立ったのを目にした。

 

私は急いで彼女の後を追い、「すぐに帰るから、私が席を立ったら行動を共に出来るように、準備していて欲しい」と耳打ちした・・・

  

 

(続く)