浦島太郎の随想

物理屋の妄想タイム

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老人の会話4ーLINE編

帰り道、オトメからLINEメッセージが入った。買い物の依頼である。

 

体調が悪く、夕食を作れない。買い物にも出られないので、そのまま食べられるものを、何か買ってきて欲しい・・・

 

というところまでは、何とか判読した。さらに、それ以外にも、買い物リストが続いていた。

 

  世の中の文字は小さすぎて読めない!

 

全くその通り。私は老眼である。が、遠くは良く見える。もともとは遠視であり、今でも視力は裸眼で1.2を超える。メガネは忘れても大丈夫なように、自宅と仕事場に一つずつ置き、歩行中は持たない。

 

とりあえず歩く方向を変え、マーケットに向かう。真っ先に向かうのは、この時間になると半額に値引きされる寿司の売り場である。最後の2つをゲットし、喜びと共にカートに放り込む。そしてスマホを取り出し、その他の買い物リストを眺めるが・・・

 

やはりどうにも判読できない。

 

やむを得ず、(私に比べれば)比較的若い買い物客の女性に、読み上げてもらうことをお願いした。女性は親切に応じてくれた。

 

   タロー: 全部読んで下さい。

   女性:  全部ですか?

 

最初のところは不要であったが、話を面倒にしてもいけない。とりあえず、全部読みあげることをお願いした。買い物客はすべて女性である。近隣の客が、それとなく聞き耳を立てている。

 

私にとっては、世の中の文字が小さくなっただけでなく、最近は人の声も小さすぎて聞こえにくい。買い物リストに入ったところで、私は雑踏の中で、耳をそばだて、近づけた。

 

   女性:  最後まで読みますか?

   タロー: 最後まで、全部お願いします。

 

リストの後に、なにやら書いてあるのはわかっていた。これも内容を知らなくてはいけない。女性は私の顔をチラと見て、やや躊躇したが、私が聞こえにくそうにしていたので、少し声を大きく、全部を読み上げた。

 

   ・・・それから、何か甘いもの、

 

  あと、バナナとヨーグルト。

 

   とくに甘いもの。

 

   今日こそ、絶対に忘れるなよ。びっくりまーく。

 

   わかったな。びっくりまーく。

 

私は丁重に礼を述べることを忘れなかった。これからは歩行中もメガネを携行することにしよう。