浦島太郎の随想

浦島太郎の随想 - 物理屋の妄想タイム

~記事へのコメントは歓迎です~

竜宮城で貰った玉手箱をうっかり開けてしまった浦島太郎ですが・・・その後もしぶとく生き続けてネバーランドに流れ着き、
若い人々と物理学を楽しむ日々を送っています・・・

随想

無意味なことをする理由・させる理由(7)

前回から続く ある年、私は2人の学生の卒業研究を指導した。一人は成績が第一位のK君であった。K君は初年時の私の授業を満点で通過しており、大変真面目な学生であった。もう一人の学生は、別の記事に登場したS君である。 対照的な2人のレポート 3年生にな…

無意味なことをする理由・させる理由(6)

前回から続く 「無意味なこと」というタイトルでシリーズを書いてきたが、この言葉を目に(または耳に)したとき、「学校の勉強」を思い浮かべる人が、かなり多いのではないだろうか? 私は小学生時代、真面目に勉強した記憶が無い。むしろ、なるべくやらず…

無意味なことをする理由・させる理由(5)

前回から続く 既得権益を保護するための仕事 かつては意味があったが、現代ではほぼ無意味になっている・・・それが分かっていても、制度上なお存在し続けている・・・という仕事は、かなりあるように思う。 これは個人の価値観や習慣でやってしまうことでは…

無意味なことをする理由・させる理由(4)

前回から続く 仕切り直しをして、 無意味な仕事の分類学の続きを試みよう。 無意味と決めつけることは言い過ぎとしても、しない方が良い、あるいは、しなくても良い、という仕事は、日本の社会では山ほどある。 見栄のための仕事 第2回の記事で、私の「綺麗…

無意味なことをする理由・させる理由(3)

シリーズの(2)から続く 「しなければならない仕事」だけで済ませ、他をすべて「してはならない仕事」とする英国流の社会人生活が板に付いた頃、私は帰国して、地方の国立大学に勤めることとなった。 それまでやっていたことを、やらずに済ませる・・・ こ…

無意味なことをする理由・させる理由(2)

(1)から続く 初回の記事に戻るが、セミナートークにおいて ・予備知識がなければ理解できない話をする。 ・聞き手の集中力が切れてからも、だらだらと話を続ける。 ・形式美に手間をかける。 彼等の基準では、いずれも無意味な行為である。 習慣による無…

無意味なことをする理由・させる理由(1)

このブログで、私は社会で行われている様々な種類の無意味な行為について、色々な場面で愚痴をこぼしてきた。我ながら、やや頻度が多すぎた気がするが・・・ 事実として、歴史的にも、無意味な行為は多かった。論語読みの論語知らずからはじまり、深刻な例と…

言葉の重要性6-現代国語と高校生(後編)

前編から続く カラオケに行くと、マイクを持ったら離さない、という人がいるそうだ。 私はカラオケには行かないので、直接は知らないが・・・ 演壇でマイクを持ったら離さない、という人種なら、大勢知っている。男子校であった私の高校は、そのような連中が…

言葉の重要性5-現代国語と高校生(前編)

このシリーズは「言葉の重要性4」の続きであるが、その間、ひとしきり英国の国語教育について話し、また「日の昇る国への羨望と失望」で、英国人が日本の国語教育に対して抱いている感情について紹介した。 ここで日本の国語教育について、少し考えて見よう…

言葉の重要性4ー卒業を控えた学生(後編)

前編の続きであるが、その学生に、どのようにして単位を出したのかは、覚えていない。当時は今とは比較にならない超売り手市場で、就職は内定していた。 答案も採点も保管され、外部審査が監視する今の時代なら、単位の認定は不可能であった。私なりの基準は…

言葉の重要性3ー卒業を控えた学生(前編)

「言葉の重要性2」から続く 日本の大学で教え始めた頃、研究室に配属された4年生が、私の担当する3年次後期の必修単位を再履修で最終学年に持越し、卒業を控えて就職が内定しても、なお単位が認定されない、というケースが続出した。 私の在職の最後のこ…

言葉の重要性2-ドイツのディクテーション

前回の記事では、多くの日本人が文章から情報を正しく読み取ることが出来ない、という読解力調査(RST)の結果を紹介し、その結果について、「特に驚いていない」と述べた。 さらに、調査を行った国立情報研究所の新井教授の分析とは異なり、日本に特有の…

言葉の重要性1

最近のテレビ番組で、RST(リーディング・スキル・テスト)という読解力調査のことを知った。国立情報学研究所の新井紀子教授により進められたプロジェクトである。 検索 したところ、昨年中にすでに発表されていた。物議を醸したようだが、私は知らなか…

回り道をした人々5(後編)

(中編から続く) ・・・しかし、このような私の指導は、どうも裏目に出た可能性がある・・・ 研究室訪問 A君がアカデミックな研究職の希望を持っていることを、私は感じていた。しかし彼の年齢は、その道を選ぶには微妙であった。 博士号を取得するには問…

回り道をした人々5(中編)

(前編から続く) 彼に叱責を与えたのは、この一度だけであるが・・・ 反逆者の顔 指導を進めるうちに、A君の反逆的な気質は徐々に姿を現すようになった。そして彼は時々、私の指導に逆らった。 実は、ワークステーションの立ち上げの時が最初ではなかった…

回り道をした人々5(前編)

ロンリー・ウルフ A君は、私が学部から修士課程の修了まで指導した学生である。その後、メジャーな大学の博士課程に進み、博士号を取得した。 A君は私の担当科目をすべて履修したが、彼のレポートを添削したことは、ほとんどない。あるとすれば、情報量を…

英国の虫

計算する時 最初から脱線した話で恐縮だが、物理屋は計算をするとき、多くの記号を使用する。 a,b,c・・・i,j,k・・・x,y,z というアルファベットである。 アルファベットの前半は定数、後半は変数と、用途が習慣的に決まっている。途中の i からnまでの6…

回り道をした人々4

博識のH.B. 教授 H.B.教授とは、「タテの教育とヨコの教育」や「ある転職」に登場したスイスのB教授のことである。また「スイスの鉄道網」でも紹介した。彼もまた、回り道をした人々の一人であった。 彼は非常な紳士であった。客人に対する気配りは相当なも…

回り道をした人々3

第2回に書いたN君のように、社会人の間に資金を貯め、なおかつ、在学中もアルバイトをしながら卒業して行った学生が、他にも何人か記憶に残る。 夕刻のやや遅い時間であった。私と妻は、家から少し遠いところに、まだ営業しているスーパーを探し、翌日のた…

回り道をした人々2

若い人々は、かつてのように、人生を急がなくなったのかもしれない。 大学へ入学する人々の年齢が、昔に比べると高くなってきた。 高校を卒業し、社会人を何年か経験してから入学する者、他大学から進路変更して転入してくる者、高校を中退し、大検を経て入…

ある転職

教授人事の日 以前の「タテの教育とヨコの教育」の記事で、スイスの大学で知ったヨーロッパの大学人事の内情を紹介した。その後、実際にこの大学で素粒子論の教授が退任し、それに伴って、新任の教授の選考が行われた。 この日のコーヒータイムは、人々が選…

タテの教育とヨコの教育

アメリカ からの応募書類は、屑籠へ放り込め! スイスの大学に共同研究で滞在していた時のことである。私は昼食後のコーヒータイムに、人々に混じって会話を聞いていた。ゲストがいる時は、彼らは英語で会話してくれる。 話の途中で、私のホストであったB教…

学位の互換性と国際的信用

ヨーロッパのディプロマ制度 日本では良く「ドイツの大学は非常に厳しく、卒業できるのは入学者の1/3程度である」と紹介されてきた。しかし、ドイツが特に厳しいということはない。 ヨーロッパのほとんどの国は、単位の取得認定と、(日本の卒業研究にあたる…

回り道をした人々1

私と同年代の人であるが、ある高名な理論物理学者の御子息と、同じ高校であった。 その高校では、しばしば生徒同士の喧嘩があったが、野次馬とともに教師が駆け付けると、当事者の1人は必ずその御子息だったそうである。その時々で、相手は変わっていた。 …

「常識」という名の同調圧力

パーティの話題 英国滞在中に、C教授の主催するパーティに何度か招かれた。C教授は私のボスではないが、私とは非常に懇意であった。 その席で、ハンガリー語とフィランド語が良く似ているらしい、ということが話題になったことがある。両国は距離的に離れて…

インディアン ウソつかない、白人 ウソつく(3)

(2)から続く 研究の話から一般論に戻ろう。 私の観察では、目的を持って嘘をつく者は、自分の優秀さを確信しているようだ。確かに、仮定法の思考回路を高速回転させることが出来なければ、上手な嘘はつけないであろう。 嘘がいずれ知れることは、承知の上…

インディアン ウソつかない、白人 ウソつく(2)

(1)から続く 昔のアメリカ製ホームコメディの、冒頭のシーンを思い出した。 妻が新発売の、家庭用嘘発見器を買ってきた。夫が自信満々に、これに挑戦する。 最初は好調であったが、途中で、上司から電話がかかってくる。職場でちょっとした不都合があっ…

インディアン ウソつかない、白人 ウソつく(1)

人は、嘘をつくサルである。 進化の過程で、思考回路に仮定法のオプションがインストールされたためであろう。 「○○○?」 と言えば、「×××!!」 となるから・・・「 ☺☺☺」と言っておこう・・・という思考回路が使えるようになったのである。 哲学者か人類学…

ヒトらしさと数理1

人間の脳には、初歩的な数学ソフトの一部がプレインストールされているようである。自然数の数理である。自然数とは1、2、3・・・と数えるときに用いる「数」であるが、これは数学的には、ある定義によって与えられる。この定義を見ると、数学に無縁の人…

ヒトらしさと数理2

「人らしさと数理1」から続く 何をもってヒトと見做すか 実際に、知性の発展段階から「人類」を定義するのは、なかなか微妙な話のようである。人類学者は、かつてヒトとサルを区別する基準として、道具を使用していたかどうかを重視していた。サルかヒトか…