浦島太郎の随想

物理屋の妄想タイム

~記事へのコメントは歓迎です~

英国の食事1-朝食

前回に続く 

 

 

コンチネンタル vs イングリッシュ

  

良く知られていることであるが、海外のホテルの案内で「コンチネンタル・ブレックファースト」とあれば、出てくるものは固いパンと飲み物(紅茶、コーヒーまたはミルク)と相場が決まっている。バターとジャム程度は付いている。何も表示が無ければ、フランス語圏のホテルではコンチネンタル・ブレックファーストが標準である。

 

これに対して「イングリッシュ・ブレックファースト」と表示されていれば、必ずベーコンエッグがあり、飲み物にはオレンジジュース、またパンに替えて(あるいは加えて)コーンフレークスやその他シリアルなど、選択肢が広がる。

 

この習慣は、家庭でもあまり変わらない。とくにスコットランド系では、イングリッシュより更に朝食が重い。英国人の食卓で唯一、やや豪華・・・(?)と言えるのが、朝食である。

 

ちなみに、ドイツ語圏や北欧では、何も表示が無くても、飲み物やパンの種類は豊富で、数種類以上のチーズ、ハム、ソーセージがバイキング形式で選べる場合が多かった。もちろん料金と関係するが、庶民的な料金のホテルでも、なかなかのレベルだったように思う。

 

 

英国 vs 日本

 

各国の人々が集う時に、互いの日常食を尋ねることは良い話題である。このような場面はかなり多かった。殆どの人は、朝食には保守的であり、夕食や昼食に比べて伝統がはっきりと表れる。

 

英国人が自らこの話題を取り上げるときは、ほぼ「お国自慢」をしたがっていると考えた方が良い。食事については各国に比べて分が悪いことを自覚しているが、朝食だけは圧倒的に優位と信じているのである(海外事情はフランスしか知らない人々が多いからだが)。

 

この話題のとき、私はなるべく黙ってやり過ごそうとする。が、殆どの場合、そうは行かない。必ず「日本人の朝食は?」と聞かれる。内容が変わっている方が盛り上がる話題なので、人々の期待感が高い。

 

しかし、ここでなるべく伝統的な食卓を紹介しようとすると、「のり」「生たまご」「納豆」など、説明に窮するものばかりが並ぶ・・・

 

そして、なるべく簡単に説明できるもので済ませようとして、「鮭の切り身」などをうっかり加えると、英国人のメンツを大きく損なうことになる。

 

 

鮭は、英国では特に高価であった。週末の買い物で、冷凍の切り身を時々購入したが、やや厚切りとはいえ、これを一つ加えるだけで、レジで支払う金額は倍に跳ね上がる。周囲の人々が思わず声を上げるほどだ。

 

日本ではこれが安い。昨日も、スーパーで300円に値引きされた弁当を購入したが、かなり大きな切り身が入っていた。

大変有り難いが・・・なぜ日本では、これほど安く買えるのだろうか?

 

鮭ばかりではない。私の子供時代、日本は敗戦の痛手から立ち上がったばかりで、食事は各国に比べて貧しいと思っていた。

その感覚は、とくに朝食の時に大きかったが・・・その時すでに、日本人の食事は比較的に豪華だったと言えるのだろう。

 

 

余談

 

先程、スコットランドの朝食をイングリッシュ・ブレックファーストの一種としたことは、訂正しておこう。英国は「連合王国」である。「英国=イングリッシュ」 としては叱られる。とくにイングランド以外では、人々の強い反発を招く。

 

スコットランドは、サッカーのワールドカップにも、イングランドとは別に代表を送っている。 ウェールズは言語も異なる(アルファベットすら少し異なる)。もちろん英語は通じるが、ローカルなパブや雑貨屋は、英語しか話さない者がやって来ると、値段を吊り上げる。 北アイルランドの複雑な事情は、言うに及ばずである。

 

英国がEUから本当に離脱すると、どうなるであろうか?

 

まず、スコットランドの独立機運が再び高まるかもしれない。独立してEUにとどまり、英語圏としてのメリットを生かせば、企業の進出など、経済が大きく好転する。国際的な地位も向上するだろう。これがウェールズにも波及し、さらに北アイルランドの分離が加われば・・・

 

メンツに拘る貴族階級が率いる「英国」は、小さな「イングランド公国」として、細々と生き残る道しか残されないであろう。

 

 

 (続く)