ビールこぼれ話2
話の途中で年が明けてしまった・・・
前回に続き、再びテニスの後の話になるが、こちらは英国である。
Bear first, or Tea ?
前回も書いたように、テニスの後はビール、と日本では相場が決まっている(と私は信じる)。英国では?
渡英したばかりのころ、妻のオトメは日本でカメ吉を妊娠中であり、私は単身で半年間、下宿生活をしていた。下宿の大家さんは後期高齢者に近い未亡人であった。息子の一人は私より少し若く、ロンドンで仕事をしていたが、子供たちの中では彼の住まいが最も実家に近く、天気の良い週末は車で実家に戻り、庭の管理に精を出すのが役割だった。
ある日、彼は私がテニスをすることを知り、大いに喜んでガードニングをそこそこに切り上げ、私とプレーすることになった。
プレーの後、家に戻ってシャワーを浴びた後、私がパブに誘うと、彼は再び大いに喜び、
「ウン、最高だ! だけど、その前に・・・」
と言って、お茶を用意し始めた。私は驚いて
「ちょっと待てよ・・・君は、ビールの前にお茶を飲むのか?」
「うん、だって、テニスをすりゃ喉が渇くだろ? 君も・・・」
と、私のカップも用意している。
「いや、僕はビールを飲む前にお茶は飲まない」
彼は怪訝な顔をして
「君は喉が渇いていないのか?」
「喉が渇いているから、ビールを飲もうと言っているんだ。
お茶なんか飲んだら、折角のビールが美味しくないだろ?」
「・・・日本人は・・・みんな、そうなのか?」
「 I believe so ・・・」
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彼は少し考え、日本人の習慣を試してみると言って、パブに直行することにした。
が、いきなりビールを流し込むことには、腹が(あるいは喉が)違和感を覚えたようで、飲みながらも、納得していない様子だった。
蛇足
テニスの後、ビールの前にお茶を飲む英国人の習慣が、最近は自然に思えるようになって来た。ビールを飲むと一時的には喉の渇きを潤す感覚があるが、生理的には水分不足の方へ傾く。私はテニスをやらなくなって久しいが、歳のせいか、これを体が実感するようになった。
英国人の習慣は、知識としてこれを理解しているからなのか?
それとも生理的に、体がお茶を欲するのか・・・?
私にはわからないが、とりあえずビールの話は、これで終わりにしよう。